預金ってすぐに凍結されるの?預金の凍結・解除について

相続人の方たちから「亡くなった方の預金はすぐに凍結されるの?」と多くの相談を受けます。今回はその預金の凍結、解除についてご説明させていただきます。

 

1.金融機関が死亡の事実を知り、預金が凍結されるまで

ご家族がなくなられたときは、死亡の事実を知った日を含めて7日以内に市役所に死亡届を提出しますが、市役所に死亡届を出すと、各金融機関に自動的に亡くなった旨の連絡がいくわけではありませんし、市役所から金融機関に情報が流れるということもありません。

よほどの有名人でない限り、家族からの預金の手続き関係で把握します。金融機関によって預金の凍結時期は異なり、直後であればそのまま預金を引き出せるでしょう。死亡事実が金融機関に伝わらないまま、預金口座を数年たっても引落ができたり、引出も自由にできてしまうことも稀にあります。

金融機関は預金を他の相続人に勝手に引き出されないため、預金の残高証明書の発行や名義変更の手続きを行うために凍結させます。相続人という理由で勝手に預金の引き出しを許してしまうと、後で他の相続人に銀行の責任を問われたり、争続の引き金となりかねません。

 

2.預金の凍結を解除するための手続き

預金の凍結を解除する手続きとして、遺言書が無い場合と有る場合とで異なります。

(1)遺言書が無い場合

相続人全員が話し合い、「誰が相続するか」もしくは「誰が一旦代表して受け取るか」が決まれば解除することができます。

この場合、相続人全員というのが重要で、相続人の中に遺産分割に対して不満や不安がある場合等で署名と押印を拒む場合があるので、その時にはその預金口座は凍結を解除する事ができません。

手続きに必要な主な書類は、各金融機関により異なりますが概ね下記の書類を揃えておけば大丈夫です。

被相続人の、生まれてからお亡くなりになるまでの戸籍謄本(除籍・改正原戸籍)

・相続人全員の戸籍謄本

・相続人全員の印鑑証明書

・相続人全員の実印が押印された銀行所定の用紙(相続届)

 

(2)遺言書がある場合

公正証書遺言書があり、預金を取得する人と遺言執行者が定められている場合には、手続きが非常に簡便になり、基本的には被相続人と遺言執行者関係の書類をそろえれば解約できます。

手続きに必要な主な書類は、各金融機関により異なりますが概ね下記の書類を揃えておけば大丈夫です。

・遺言書

・遺言者の除籍謄本

・遺言執行者の印鑑証明書

・遺言執行者の実印を押印した払戻依頼書

 

3.誰が相続するかが決まらない場合の、葬儀費用等の一部引き出し

誰が相続するか決まるまでに、葬儀費用などお金が必要な場合に、被相続人の預金の一部で工面したい場合もあるかと思いますが、一般的には銀行もトラブルになるようなことを引き受けてくれません。

ただ、金融機関にもよりますが、配偶者であれば相続人全員の同意がなくても預金を引き出し、名義変更をすることが可能ですし、お葬式代、入院費相当額の払い出しということで、所定の必要事項の書類の提出で応じてもらえるケースもあります。

 

4.凍結前の口座引き出しについて相続申告時に気をつけること

銀行口座の凍結前に一部引き出しを行えば、銀行から発行される預金の残高証明書の金額はその引き出しの金額分だけ少なくなりますが、その残高証明書の金額を相続財産として申告して申告課税漏れのケースを良くあります。あくまで相続財産として申告すべきは、相続開始の日(死亡日)時点の預金残高になりますので、相続申告を行う方は十分に気をつけてください。

 

相続手続きで必要な戸籍の取得の仕方

相続手続きで相続登記を行う際にも、相続税の申告を行う際も、必要になってくるのが「戸籍」です。被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの連続したすべての戸籍が要求されます。

 

1 出生まで遡った戸籍を取得する理由

戸籍を取得する理由は、相続手続きで最も重要となる「相続人の確定」のためです。

戸籍には被相続人に子供が何人いて、兄弟が何名いるとか、離婚や養子の履歴も載っています。また、戸籍を出生まで遡らなければならないのは、例えば、離婚によって除籍された実子が結婚後の戸籍に記載されず、本来相続権を有する実子の存在を把握することが出来なくなってしまうからです。相続人を確定することは、相続人本人にとっても自分が相続人であることを証明する大事な提出書類でありますし、相続税の計算においても基礎控除額に影響してきますので、間違えれば相続税が大幅に変わってくることになります。

では、実際どのように、戸籍を取得していくのか具体的にみていきます。

 

2 戸籍の取得の仕方

まず、被相続人の本籍地が分っているならその本籍地の役所に行って請求を行います。

本籍地が不明な場合でも住民票(この場合は除票といいます。)を取得する事によって本籍地が記載されていますので、住民票を取得することで本籍地を確認することができます。

戸籍は出生から死亡前の連続したすべての戸籍が必要となりますので、一番厄介なのは出生から死亡までずっと同じ本籍地であれば1箇所の役所ですべて揃うのですが、結婚した際に夫の戸籍に入ったら夫の方の本籍地に移転しますし、引越しをした際に本籍地も引越し先の市区町村に変えていれば何箇所もの役所に請求する事になります。

※該当する区役所が遠方の場合には、郵送による請求も出来ます。

また、戸籍は誰でも取得ができるわけではなく、戸籍に記載のある配偶者、直系尊属直系卑属に限定されます。出生から死亡までの連続した戸籍を取得するのは手間がかかるため、専門家である税理士に依頼することもできます。

一般的に相続の手続きには「戸籍謄本」を使用しますので、被相続人の最後の本籍地の役所で最終の戸籍謄本を取得します。取得した戸籍謄本の戸籍事項欄に「改製」「転籍」「戸籍削除」等の記載があれば、改製前の原戸籍の取得、転籍前の除籍謄本などを取得する必要が出てきます。その取得した前の戸籍謄本の戸籍事項欄を確認し、これを繰り返すことで出生まで遡って戸籍を取得していくことになります。

 

 

 

3 戸籍の種類について

(1)戸籍謄本・抄本とは

戸籍には戸籍謄本(こせきとうほん)と戸籍抄本(こせきしょうほん)の2種類があります。

一般的に相続の手続きには戸籍謄本を使用します。

では、戸籍謄本と戸籍抄本は何が違うのでしょうか。

まず、私たちが役所で取得できる戸籍は、戸籍原本の写し(コピー)のみです。

原本は本籍地にある役所で管理されていますので、原本を入手することはできません。

私たちが取得できるのはあくまで原本の写し(コピー)となります。

そしてこの「写し」なのですが、写す内容によって、謄本か抄本かに分かれます。

謄本(とうほん)とは、原本の内容すべてを写している書面

抄本(しょうほん)とは原本の内容一部のみを抜粋して写している書面

よって、戸籍謄本は、その戸籍に入っている全員の事項を写したもの戸籍抄本は、戸籍にかかれた一個人の事項のみを抜粋して写したものということになります。

そのため、戸籍謄本は「全部事項証明」、戸籍抄本は「個人事項証明」と呼ばれています。

戸籍謄本・抄本は一般的に「現在戸籍」と呼ばれ、その戸籍に生存している人が1人以上いる必要があります。

もし、戸籍に入っている全員が死亡または婚姻等によって、別の戸籍に移動して、その戸籍に誰もいなくなった場合には、その戸籍は「除籍」と呼ばれる戸籍になります。

相続手続きでは原則、亡くなった方(被相続人)の出生から死亡までのすべての戸籍が必要なのですが、この“すべて”の戸籍の中に含まれるのが、改製原戸籍、除籍謄本です。

 

(2)改製原戸籍(かいせいげんこせき)(原戸籍(はらこせき))とは

日本には「戸籍法」という戸籍に関する法律があります。

この戸籍法が改正されることによって、戸籍の様式などが変更され、その都度新しい様式の戸籍に書き替えが行なわれるのですが、この書き替えをする前の戸籍のことを

改製原戸籍」、「原戸籍」といいます。

※「改製原戸籍」も「原戸籍」も同じものを指します。「原戸籍」は「改製原戸籍」の略称です。

また最近では、戸籍のコンピュータ化を行っている自治体がほとんどで、コンピュータ化をする際、元になった紙ベースで保管されていた戸籍のことも「改製原戸籍」と呼ばれています。しかし、法改正での「改製原戸籍」と区別するために「平成改製原戸籍(平成原戸籍)」とも呼ばれています。

改製原戸籍は、内容をそのまま書き写すわけではありません。

法改正などによって戸籍の書き替えが行なわれるわけですが、この書き替えは記載されているすべての内容をそのまま書き写すわけではないのです。

例えば、父母子どもの3人家族の戸籍があって、離婚をした母と子どもは別の戸籍に移ったとします。

この場合、母と子どもの欄にはバツ印がつけられ、除籍した(その戸籍から出て行った)ということがわかり、父の欄にも離婚についての事項が記載されます。

しかしその後、法改正などによって新しい戸籍が作られると、父の欄に離婚の記載はなくなり、子どもの記載もなくなります。

新しく作られた戸籍では、父が過去に結婚歴があり子供がいたということがまったく記載されていないのです。

法改正などによって戸籍の書き替えが行われる場合、「死亡」、「離婚」、「転籍」などの理由による除籍の事項は省略されてしまうのです。

 

除籍謄本とは、在籍している人が誰もいない状態になった戸籍のことです。

結婚、離婚、死亡、転籍(本籍地を変更)などにより、戸籍に誰もいなくなった場合、その戸籍は「除籍」という名の戸籍になります。

転籍については、「本籍地」の移動をした場合にのみ、その戸籍から出て行くことになりますので、引越しなどによる住所変更では影響がありません。

そのため、日本全国を転々と引越しをしていたとしても、本籍地の変更届を出さなければ、本籍地はずっと変わりませんので、1つの役所でその方のすべての戸籍が管理されています。

※ひとによっては、住所(住民票を登録している所在地)を変更するごとに、本籍地もあわせて変更申請している方がいます。