相次相続控除

ある一定の期間内に立て続けに相続が発生することを相次相続といいます。

例えば、父が亡くなり母が遺産を相続し、すぐに母が亡くなったケースです。相続が発生する度に相続税が課されることになりますので、短い期間に同じ財産に対して再び相続税が課税されることになります。この二重課税による税負担を防ぐために、短期間に相次いで相続が発生した場合にはこの相次相続控除が適用されます。

この場合の短期間とは、具体的には10年以内に続けて相続が発生した場合のことを言います。

 

  • 相次相続控除の計算

   

  A:今回の被相続人が前回の相続時に取得した財産に課された相続税

  B:今回の被相続人が前回の相続時に取得した財産の価額

  C:今回の相続により相続人と受遺者が取得した財産の総額

  D:今回の相続でその控除対象者が取得した財産の価額

  E:前回の相続から今回の相続までの年数(1年未満は切り捨て)

 

【適用要件】

  • 被相続人の相続人であること
  • その相続の開始前10年以内に開始した相続により被相続人が財産を取得していること
  • その相続の開始前10年以内に開始した財産について、被相続人に対し相続税が課税されたこと

 

(注)

相似相続控除の適用対象者は相続人に限定されており、相続を放棄した者及び相続権を失った者については、たとえその者について遺贈により取得した財産がある場合においても、相次相続控除の規定は適用されません。

 

参考:国税庁HPより

障害者控除・未成年者控除

障害者控除・未成年者控除

 

相続又は遺贈により財産を取得した者が障害者又は未成年者である場合には、それぞれ下記計算式によって求めた金額を控除することができます。

 

  • 障害者控除

   障害者 : 10万円 × (85歳 - その相続人の年齢)= 障害者控除額

特別障害者 : 20万円 × (85歳 - その相続人の年齢)= 障害者控除額

 

 ※障害者の範囲

一般障害者

特別障害者

児童相談所知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター若しくは精神保健指定医の判定により知的障害者とされた者のうち重度の知的障害者とされた者以外の者

精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者又は児童相談所知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター若しくは精神保健指定医の判定により重度の知的障害者とされた者

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第45条第2項の規定により交付を受けた精神障害者保健福祉手帳に障害等級が2級又は3級である者として記載されている者

精神障害者保健福祉手帳に障害等級が一級である者として記載されている者

身体障害者福祉法に身体上の障害の程度が3級から6級までである者として記載されている者

身体障害者手帳に身体上の障害の程度が1級又は2級である者として記載されている者

戦傷病者手帳の交付を受けている者のうち障害の程度が恩給法に定める第4項症から第6項症等と記載されている者

戦傷病者手帳の交付を受けている者のうち、精神上又は身体上の障害の程度が恩給法別表第一号表の二の特別項症から第三項症までである者として記載されている者

常に就床を要し、複雑な介護を要する者のうち、精神又は身体の障害の程度が上記1又は3に掲げる者に準ずるものとして市町村長又は特別区の区長等の認定を受けている者

原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律第11条第1項の規定による厚生労働大臣の認定を受けている者

精神又は身体に障害のある年齢65歳以上の者で、精神又は身体の障害の程度が上記1又は3に掲げる者に準ずるものとして市町村長等の認定を受けている者

常に就床を要し、複雑な介護を要する者のうち、精神又は身体の障害の程度が上記1又は3に掲げる者に準ずるものとして市町村長等の認定を受けている者

 

 

精神又は身体に障害のある年齢65歳以上の者で、精神又は身体の障害の程度が上記1又は3に掲げる者に準ずるものとして市町村長等の認定を受けている者

 

  • 未成年者控除

   10万円 × (20歳 - その相続人の年齢)= 未成年者控除額

 

 

3.余った控除額は扶養義務者から控除可能

障害者控除・未成年者控除で、それぞれ適用者の相続税額を上回る控除額があった場合には、その上回った税額分を扶養義務者から控除することができます。

この場合の扶養義務者とは、配偶者又は民法に規定する親族のことをいい、直系血族と兄弟姉妹がこれに該当します。また、扶養義務者が2人以上いる場合には、それぞれの控除額の配分は協議によって定めることができます。

 

配偶者の税額軽減(配偶者控除)

お亡くなりになった被相続人の配偶者が相続財産を取得した場合、その配偶者が取得した相続財産にかかる相続税額が大幅に軽減される「配偶者の税額軽減」を適用することができます。配偶者は被相続人の財産形成や維持に貢献したと考えられるので、被相続人の亡き後も生活ができる様に、多くの財産を手元に残しておけるような配慮がなされているのです。ただし、配偶者には内縁関係にある妻や愛人は含まれません。婚姻届を提出し、法的に正式に夫婦となった方のみ、配偶者控除の対象となります。

また、配偶者控除を適用して相続税額がゼロになる場合においても、相続税の申告書を提出する必要があります。

 

  • 配偶者の相続税から控除できる額の計算式
    • 配偶者の法定相続分に相当する額(1億6,000万円未満のときは、1億6,000万円)
    • 配偶者が実際に取得した額(配偶者の課税価)

 

たとえば、配偶者の法定相続分が3億円であれば3億円、法定相続分が1億6,000万円までであれば1億6,000万円までの取得分が非課税となります。

 

  • 申告が必要

配偶者の税額軽減を適用するためには、申告期限内(相続の発生から10ヶ月以内)に相続税申告を行う必要があります。配偶者の税額軽減を適用することで相続税が発生しないケースにおいても申告は必要なので、注意が必要です。当然ですが、配偶者の税額軽減を適用しなくても相続税が発生しないのであれば、申告は不要です。

 

  • 遺産分割協議が必要

配偶者の税額軽減を適用して申告するためには、申告期限までに遺産分割協議を行い、配偶者が相続する分を確定させる必要があります。申告期限までに遺産分割がまとまらなければ未分割で申告することになりますが、その場合は配偶者の税額軽減を適用できません。

 

しかし、3年以内に遺産分割協議がまとまる見込みがあれば、所定の書類に記載することで、期限を3年間延長することができます。

 

この場合、相続税申告時に配偶者の税額軽減を適用せず、多めに納税し、分割確定後に税金が戻ってくるイメージとなります。一時的に多めに納税することになるので、注意が必要です。

 

4.二次相続まで考慮した遺産分割

この配偶者の税額控除、上記1の計算式で示した通り税額に与える影響は大きく、配偶者が全ての財産を取得すれば相続税額がゼロになるケースもよく見受けられます。しかし、一次相続で安易に配偶者が多くの財産を取得することはお勧めできません。なぜなら配偶者が亡くなった際にはその子供が相続するケースが多く、その際は当然この配偶者の税額軽減を適用することはできません。つまり一次相続のみならず、二次相続まで見据えた遺産分割を行うことが必要となります。一次相続の分け方次第で、一次・二次相続の合計税額が数千万円も違ってくるケースもありますので、慎重に遺産分割を行うことが必要です。

 

相続財産に占める土地の割合

平成27年1月1日から相続税基礎控除額が減少しました。これにより都市部に不動産を所有されている方の多くが相続税申告を行う可能性が出てきました。

過去の相続税申告における相続財産に占める土地の割合はどのようになっているのでしょうか。

 

【相続財産の金額の構成比の推移】

国税庁HPより)

 

上記グラフでは地価の下落と共に相続財産に占める土地の割合は減少しています。しかし、それでも直近の平成26年の土地の割合は41.5%と、半分近くの相続財産額を土地が占めています。上記データからわかるように、土地の評価額によって相続税額が大きく変動するのです。

 

土地の評価額は、その土地の評価をする税理士によって大きく異なることがあります。有価証券や現預金といった金融資産は税理士によってその評価額が増減することはほとんどありませんが、土地については高度な評価知識、経験等の差がはっきりと表れます。弊所では年間100件近くの相続税申告経験を持つ税理士がお客様の財産評価を行い、さらに所内で複数名による評価資料のチェックを行うことで、税法上認められる範囲内で最大限評価額を抑えることができます。

 

相続税の還付額は平均約1,200万円!その殆どが土地の評価ミスによるもの】

過去5年以内に土地を含む遺産を相続し、相続税申告で納税が生じた方の多くが、その納めた税金が還付される可能性があります。国税庁のデータによると、1件あたり平均約1,200万円もの税金が還付されています。これは、1回目の相続税申告が間違っていたことを意味します。税理士に依頼して申告をしたにも関わらず、何故この様なことが起こるのでしょうか。

1年間の相続税申告件数と全国の税理士の数を比較してみると、相続税申告件数の方が少ないことがわかります。これは、1年間に1件も相続税申告をしない税理士が多数存在することを意味します。平成27年より基礎控除額が引き下げられた為、相続税申告が必要となる方が増加することが予想されておりますが、相続税申告に不慣れな税理士に申告を依頼することによって、余分な相続税を納付してしまうリスクを考えれば、やはり当初の申告から相続税申告の知識、経験のある税理士に依頼されることを強くお勧め致します。

相続の欠格・廃除とは

  1. 欠格

被相続人の配偶者や子などは、原則として被相続人の遺産を相続する権利があります。しかし、相続人らの不正な行為、あるいは被相続人の意思によって、相続人としての立場を喪失することがあります。

遺言を偽造した者や、被相続人を殺し、刑に処せられた者などは、被相続人の意思に関係なく相続権を失います。これを相続欠格といいます。

相続欠格になる事由として大きく2つに分かれます。まず、被相続人などの殺人等に関する行為を行った場合と、遺言に関する行為を行った場合です。具体的には

  •  故意に被相続人や先順位、同順位の相続人を殺害したまたは殺害しようとしたために、刑を受けた場合
  •  被相続人が殺害されたことを知りながら、告発や告訴をしなかった場合
  •  詐欺や脅しにより、被相続人が遺言を作成したり、変更したり、取り消したりすることを妨げた場合
  •  詐欺や脅しにより、被相続人に遺言の作成や変更、取り消しを強要した場合
  •  被相続人の遺言書を偽造、変造、破棄、隠匿した場合

以上に該当する行為を行った相続人は、何の手続きもなく相続権を失います。なお、相続欠格者は、相続できないのはもちろんですが、遺贈を受けることも出来ません。

 

  1. 廃除

被相続人への虐待や屈辱など、ひどい行為があった場合、被相続人の意思に基づき、相続人の相続権を奪うことが出来ます。これを相続の廃除といいます。

廃除の対象者は、遺留分をもつ推定相続人、すなわち配偶者や子(代襲者も含む)、直系尊属に限られ、兄弟姉妹は該当しません。

廃除の手続きには、被相続人家庭裁判所に廃除請求を申し立てる方法と、遺言による方法とがあります。

また、相続放棄と違って欠格や廃除の場合には、代襲相続が認められますし、欠格者や廃除者の相続分は他の相続人の相続分として配分されることになります。

相続の発生とは

  1. 相続とは

相続とは、人がなくなったとき、原則その人のすべての権利や義務、財産をある一定の親族関係にある人が受け継ぐことをいいます。

亡くなった相続させる人を被相続人、財産や権利・義務を受け継ぐ人を相続人と呼びます。

すべての財産とは、土地や建物、現金などのプラスの財産はもちろん、借金などのマイナスの財産も含まれます。プラスの財産のみ、または、特定の財産のみを受け継ぐことは出来ません。

民法において、相続とは、死亡によって開始すると定められています。つまり、何の手続きもなく、人が死亡すると、相続が開始されます。

 相続にまつわる問題は、相続税だけではありません。一番の問題は残された財産を誰がどのように受け継いでいくのか、ということです。この問題は資産家に限らず、誰にでも起こりうることです。相続を『争族』にしないためにも、きちんとした準備が必要です。

 

  1. 遺贈とは

遺贈とは、遺言によって遺言者の財産などを譲渡することを言います。遺贈する人を遺贈者、遺贈により財産などを受け継ぐ人を受遺者といいます。遺贈は一般に、相続人以外の人に財産を譲渡する場合に行われますが、相続人に対しても行うことが出来ます。

 

  1. 贈与とは

贈与とは、自分の財産を他の人に無償で与えることをいいます。この場合、贈与する側、受け取る側の双方の合意が必要となります。受け取る側が知らないなど、一方だけの意思表示は贈与といえないことになります。

 

相続税申告とは

 

親や兄弟が亡くなり、財産を相続することになったからといって必ずしも相続税が発生するとは限りません。

 

当然、財産が多ければ多いほど相続税申告が必要となる可能性が高まりますが、正確には個別具体的に判断する必要があります。そのため、相続税が発生するのかどうか知ることが相続税申告におけるスタートと言えるでしょう。

 

 

 

基礎控除とは

 

相続する財産は必ずしもプラスの財産だけとは限りません。

多くの場合は、債務などのマイナス財産や、各種控除があり、これらを相殺した後の額を課税価格といいます。

 

そして、課税価格が基礎控除を超えた場合にはじめて相続税が発生します。

基礎控除は下記の計算式によって求められるので、状況によって変わってきます。

 

基礎控除=3,000万円+600万円×法定相続人の数(08)

 

例えば法定相続人の数が3人ですと、課税価格が4,800万円を超えた場合にのみ相続税が発生します。

 

申告期限

 

基礎控除を超えた場合は、相続税申告が必要です。そして、相続税の場合も確定申告と同じように申告期限があります。

相続税の申告期限は相続発生日(被相続人がお亡くなりになった日)から10ヶ月後と決められているので、この日までに相続税申告を行います。

 

10ヶ月と聞くと長く感じるかもしれません。しかし、この期間内に、資料収集・財産評価・遺産分割協議・申告書等の作成、以上を全て行う必要があるのです。

意外とタイトなスケジュールだと思いませんか。

相続の方法は3種類 ~ 単純承認・限定承認・相続放棄 ~

「相続」という言葉からは、財産を受け継ぐというのが一般的なイメージですが、財産にはプラスの財産もあればマイナスの財産もあります。マイナスの財産、つまり借金などの債務の承継を一部拒否したい場合、相続自体を放棄したい場合も出てきます。

具体的には、相続の対応方法は3種類あり、いずれかを選ぶことになります。

 

  • 単純承認

被相続人の権利や義務をすべて相続する方法です。プラスの財産もマイナスの財産もすべて受け継ぐことになります。一般的な相続はこの形が多いです。

借金などの債務がある場合は注意が必要です。債務の割合は、相続人間で自由に決めることができますが、その割合は第三者である債権者に主張することは出来ません。

例えば、1人の相続人が債務の全額を相続すると決めたとしても、債権者は長男から債務を回収出来なければ別の相続人に請求することが出来ます。

  • 限定承認

プラスの財産の範囲内で、借金などの債務の弁済義務を負う方法です。被相続人のプラスの財産からその債務を支払うので、相続人が自己の財産から支払う必要がないので、被相続人にプラスの財産とマイナスの財産がどちらの方が多いか不明な場合には有効な手段です。

ただし、限定承認は相続人全員が共同で行う必要があり、手続きも面倒なため、あまり行われてないのが現状です。

プラスの財産もマイナスの財産もすべて受け継がない方法です。借金の方がプラスの財産よりも明らかに多い場合などに有効です。

相続を放棄すると、その者ははじめから相続人でなかったことになり、代襲相続も認められません。なお、相続放棄は相続人1人でも行うことが出来ます。

限定承認や相続放棄を行う場合は、被相続人の死亡の事実を知り、かつこれにより自分が法律上、相続人になったことを知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所にその旨を申し出なければなりません。期間内に申し出なかった場合は、単純承認をしたこととなります。

 

以上、3つの方法をご説明させていただきましたが、相続財産の一部または全部を処分した場合は、原則として限定承認や相続放棄することは出来ません。また限定承認や相続放棄を行ったあとでも、相続財産を故意に隠したり、消費したりしていたことがわかった場合なども、原則としては、単純承認として扱われますので注意が必要です。